角田光代さんに会いに行くの巻


それはまだ、私が二十歳にもなっていない頃。


「愛してるなんていうわけないだろ」
そんな変わったタイトルとカバーのデザインに惹かれて、書店でなんとなく手にとったエッセイ本があります。

読んでみたらそれが思いのほかツボで、私の迷いがスっと腑に落ちるよな心地よさ。
以来心がモヤモヤすると、よくこの本を開いて何度も読みました。私の20代はこの本とともにあったと言っても過言ではない気がする。


やがて私も大人になり結婚もして、抱えるもやもやごとが、この本の内容では収まりきらなくなったころ、たまたまテレビで芥川賞・直木賞受賞のニュースを見たのです。

「直木賞受賞作品『対岸の彼女』角田光代」


なんだか胸騒ぎがして本棚に走り、かつて読んだエッセイ本を見てみたら、その本の作者がまさに、角田光代さんだった。
そうなんだ。あのエッセイ本の作者が、時を経て直木賞を受賞したんだ。角田光代さんのお名前を初めてきちんと認識した瞬間でした。

なんだか感動したわけです。無性に。
私はすぐに「対岸の彼女」を購入。初めて角田さんの小説に触れ、そこから私は、角田さんのファンになりました。



…という話を、ブログや口頭で何度かしたことがあるので、いい加減この回で終わりにしようと思っています。(多分)

そんな風に公言していたおかげで、「えびの文化センターに角田さんがくるよ」って情報を、私の角田さん好きを知っているお友達が教えてくれました。

今宮崎に在住されている俵万智さんとの座談会。

宮崎に住んでいる方はお分かりだと思いますが、えびのという所は、宮崎市内から車で2時間くらいかかるのです。おりしも日時はウイークデーの夕方。帰りは遅くなってしまうの必至。
(しかも私は夜の運転が苦手なうえに方向音痴)

すごく行きたい…。けどどうしよう。やっぱり遠すぎるかな?
でも悩んでいる間に、私の角田さん好きを知っている方さらに2人から、「角田さん宮崎にくるみたいだよ」ってお知らせが。(どんだけ公言しちゃったんだろ私)

もうこれは運命だと思いました。
しかもウィークデーとはいえ、その日は仕事がお休みの日だったのですから。
きっと神様が準備してくれたのだと都合よく思うことにして、行ってきたのでした。



そして今、
私の手元にあるあのときのエッセイ本には、角田さんのお名前が入りました。


本を購入するとサインをいただけると聞いて、もちろん購入したのですが、
実はもしチャンスがあればと、思い出の本もこっそりバッグに忍ばせていたのでした。

本を見てびっくりされてた。そして、「わーもう恥ずかしてくて読み返せない」っておっしゃってました。
なんとなく分かります。あれからたくさんの時が経ちました。

「大切に取っておいてくださってありがとうございます」

年季の入った本を恐縮しながら差し出す私に、やわらかな温かい表情でそう言ってくださり、丁寧にサインを書いてくださいました。


20代のころは20代のころで、それなりにいろいろな悩みを抱えながら生きていた。
そんなときに、いつも隣にあった本。

20年以上経って、本の作者とお会いすることができた。本にお名前を書いていただいた。
青春時代に漕ぎ出した船のひとつが、ようやく岸にたどり着いたような気分です。

行って本当に良かった。

角田さんの本のなかに、「present」という大好きな本があるのですが、
私にとって、このできごとがまさに、そのプレゼント。


一生の宝物になりました。


※座談会も素晴らしかったです。長くなるので端折りましたが、私も書くこと頑張りたいと、改めて思った。


海日和♪

南国宮崎の海の香りをあなたにお届け。 夫のサーフショップのお手伝いをする毎日、一人の母として、一人の女性として、日々の徒然を気ままに綴ります。

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