心にぽっかりと穴が空いてしまった

先日父が、とうとう旅立ってしまった。


最後は薄れゆく意識のなか、視線だけはしっかりと動かして、家族や孫たちの顔をひとりひとり確認していた。


目だけを動かしながら家族全員を確認していたけれど、ことさら母のことをずっと見つめていたように思う。父は理屈抜きで、いざというときはいつも母の味方、最後まで母を愛した人だった。



私の瞳も、父としっかり重なるひとときがあった。

言葉など何の力も持たないほどの思いで、父を見つめた。父も、言葉はなくても、これから私が生きていく一生分のエールをくれた。


思えば父の最後の10年間は、苦しいことが多かったと思う。

「悲しいできごとに、いちいち意味なんて考えない」。
ふだんはそんな風に思うようにしているのだけれど、今度ばかりは意味を見つけ出さずにはおれなかった。


「父は、家族が背負ってしまった必要のない荷物を、ひとりで背負ってくれたのだ」


起こった出来事に意味があるとしても、きっと分かるのはずっと後になってから。だけど今は、そう思うことにした。それが一番父らしいと思ったから。

親孝行どころか、傷つけてばかりのひとときがあった。父のことが大好きだったのに。

だけどどうすれば良いのか、どうしても分からなかった。今でも、分からない。


そんななか、父が最後に、必要のない荷物を持てる限りを尽くして背負ってくれた。

だから私ももう、必要のない感情に意地を張ってしがみついていてはいけないんだと思う。
人生をあきらめずに、幸せに向かって歩いていかなくては。

今私にできる父親孝行は、もはやそれしか残っていない。



父にありがとうとどうしても伝えたくて、でも、言ってしまったらもうその呼吸が止まってしまいそうで、怖くて言えなかった。

そして、父が最後に大きく息をしたときに、やっと言えた。父にその声は聞こえただろうか?


お別れは辛いけれど、もしも天国というものが本当にあるのなら、父はきっともとの元気な父に戻っているはず。
そう思うと、心が随分と救われる。

元気で、たくましく、人が大好きだった父に戻って笑っているはずだ。
もう姿を見ることはできないけれど…。

最後は寝たきりが続いた父だけれど、
心にぽっかりと空いてしまった穴に、その存在の大きさを思い知る。



海日和♪

南国宮崎の海の香りをあなたにお届け。 夫のサーフショップのお手伝いをする毎日、一人の母として、一人の女性として、日々の徒然を気ままに綴ります。

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