名前
葬祭場の案内立札に父の名前を見たとき、
なんだかとても不思議な感じがした。
今まで何度も目にしたり、書いたりしてきた父の名前が、故人として記載されている違和感。
2日間そこに記載される父の名前を、何度も何度も見たけれど、なんだか違和感を感じてずっと慣れなかった。
あの、葬祭場で父の名前を見たときの感情が、今でも忘れられない。悲しみとはまた違う感情もあったように思う。不思議な感覚だった。
名前には不思議な力があるように思う。
魂が宿っているような気がする。
たとえば初恋の人の名前。
会って顔を見ても思い出せないかもしれないけれど、偶然名前を見かければ少しハッとするかもしれない。
私は自分の名前が、子どものころは好きではなかった。
男にも女にもある名前。
もっと女の子らしい名前が良かったと思っていた。
だけど今はもう、私はまぎれもなくこの名前な私。
ひらがなであることも、視覚的に好きだと思うようになった。
さらに結婚をして姓が変わり、ますますとてもスッとしたシンプルな印象に。
子どもでも簡単に書けるこの名前が、結構気に入っている。
「奥さん」「◯◯くんのママ」
そう呼ばれることの方が多くなった今となっては、名前で呼ばれると、ちょっぴりうれしくもある。
私の名前。
そしてあなたの名前。
名前も知らない出会いもあるけれど、大切な出会いでは、できれば名前を覚えていたい。
また会えるのが一番だけれど、名前を見てハッとする、そんな、名前の再会もなかなかすてきではないかと思う。
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